音楽と言うお稽古事・練習について②

昔々、私が某音楽教室の講師をしていた時のお話です

幼児期グループレッスン生の中のある生徒さん

その子は練習が中々定着出来ませんでした

システムに則ったグループレッスンですので、レッスン時間や期間の中で“進まなくてはならない曲や項目”があり、グループとしての指導バランス等の関係から「どうしてあげたら良いかな…」と講師の私は悩んでいました

その子は事有る毎に「レッスン辞める!」と言っていました
それは私が生徒さんから直接言われたのでは無く、付き添われているお母様が「子どもが“辞める!レッスン行かない‼︎”ってきかないので辞めさせて下さい」と仰られました

辞める事は簡単です

でも講師は生徒さんの“辞める理由”を知る必要があります

それは講師の指導に問題がある場合もありますし、何かしらの練習環境の問題等、様々な原因が元で「辞める」事に繋がります

場合によっては生徒さん・親御さんと共に講師がじっくりと話し合いを重ねる事で気づく事があり、「実はこんな事が原因だったの?それって解決出来るよ‼︎」と言う事が多く、それによって生徒さんの気持ちの切替が出来ていく…と言う事が意外と多いのです

こちらの生徒さんは所謂“練習さえすれば上手に弾ける”生徒さん

だからこそ練習が定着して欲しいのですが、練習から遠ざかる程気持ちは焦り、楽しい気持ちが無くなっていくパターンでした

楽しいから練習するのか?
練習するから楽しくなるのか⁇

最初は皆さん後者です
練習を重ねていく事で楽しさを感じ、それが成功体験となって更なる練習へと繋がるのです

練習しなければ成功体験は得られませんし、全てはそこからだと思います

お母様は子どもさんへ“練習の声掛け”は心掛けていらっしゃった様ですが、よくよくお話を伺ってみるとお母様は「弾けていたかどうか分からない」と仰られていました

つまりお母様は「練習したか?していないか?」と言う確認で終わっていた、と言う事が分かりました
そして「練習しなさいと言うのに疲れた、もう言いたく無いので辞めさせて下さい」と…

うーん、お母様のお気持ちはとてもよく分かるのですが…それはどうなのかな…それは“お母様のご都合”になっていないかな?と感じました

お母様とお話を重ねていくと、「そうか…子どもがどこをどんな風に頑張ったか…私、聞いていませんでした」と仰られました

そこで私はお母様にお伝えしました

「先ずは練習についての“お家ルール”を作ってみませんか?
その練習は毎回お母様が付き添わなくても良いので、“○曜日はお母さんに演奏を聞かせてね”、“練習の最後はお母さんに聞かせてね”と、ほんの少しでもお子さんに寄り添って、子どもさんが取り組んでいる事を共有してあげて下さい!」

何もお母様がお子さんへ演奏指導等されなくても構わないのです‼︎
お母様が感じるままに「頑張ったね!凄いね‼︎」「ゆっくり弾いてみても良いかもよ?」「お母さん、ココが好きだな~!」と
言葉をかけて、耳を傾けて、頑張る子どもさんのお姿を見てあげて下さい

お子さんの気持ちがのっていない時は、「お母さんにあの曲を聞かせてよ~」「お母さんも横でちゃんと聞いているから練習頑張ろう!」等、“共に頑張る”と言う気持ちの共有をしてあげて下さい、と重ねてお伝えしました

お母様は「練習するやる気は本人の問題と思っていて、支えてあげていなかったです…」と仰られました

生徒さんの年齢にもよりますが、“やる気や自主性は本人の問題”として親御さんがノータッチ状態は、子どもさんにとってとても厳しい場面が多々あります

これは音楽レッスンだけでは無く、全ての事に繋がると思うのです

     共に乗り越える…

その向こうに共に感じる成功体験=音楽を奏でる喜びがあり、その思いを共有出来る
幸せがあります

その後、生徒さんは練習定着へと繋がり、結果的にシステムコースが修了する迄、レッスンを続ける事が出来ました(*^^*)

生徒さんお母様、共に本当によく頑張られたと思います

よく「親の敷いたレールに乗せず、強制せず、子どもには自分で考えて進んで欲しい」と言う言葉を伺います

子どもさんであっても1人の人間ですから、子どもさんの気持ちをくみ取る事は勿論必要ですが、子どもさんが幼い内は一つの道筋・道標・考え方のお手本としての“親御さんのレール敷き”は必要だと思います

さぁ、練習しようか!
さぁ、レッスンに行こうか!
ねぇ、聞かせて!
ねぇ、もっと聞かせて!

導き、大切ですね



あの子は今20代半ば…

もう鍵盤は弾いていないかもしれないけれど、乗り越える経験はいつになってもあの子の根っこになっている…と、私は信じています